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第2話 女性用の服はありません

Autor: 운디네J
last update Fecha de publicación: 2026-10-18 21:30:18

「女性用の服は、ありません」

イヒョンはボタンにかけた手を止めた。

目の前の男は、もう背を向けていた。うなじは日に焼けているのに、耳の先だけが赤かった。

イヒョンは少し、その背中を見た。

女性用の服?

* * *

目を覚ましたのは、明け方だった。

知らない天井と、薪の匂い。

寝台の横に男がいた。大きな体を狭い椅子に押し込むようにして、眠っていた。斜面から引き上げてくれた人だった。

斧と、ひっくり返る森を思い出した。

まだ、自分が男の手首を握っていた。

離すと、男が目を開けた。

「どこか、痛みますか」

寝起きの声が、低くかすれていた。

「足首が、少し……」

男は脚を見て、水を差し出した。上体を起こすと、背に枕を入れてくれた。大きな手が近づき、イヒョンはびくりとした。

男はすぐ引っ込めた。

「驚いたよな」

「さっきは、熊かと思いました」

言ってから、イヒョンは口を閉じた。

男が自分を見下ろした。

「熊は、斧を持ちません」

イヒョンの口から笑いが漏れた。笑って咳き込むと、男の表情がすぐに固くなった。

「ゆっくり」

コップを支える手は、驚くほど慎重だった。

イヒョンは名を告げた。

「イヒョンです」

男の視線が、少し顔に留まった。

「ムジン」

「助けてくださって、ありがとうございます。ムジンさん」

答える代わりに、ムジンはストーブへ薪を入れた。

* * *

明るくなっても、雨はやまなかった。

道を見て戻ったムジンは、沢が増水していると話した。上の尾根に救助を求める印を残してあり、水が引くまで小屋にいなければならないという。

今ごろドユンは、自分を探して山を歩き回っているだろう。

申し訳なかった。

それなのに、ここで朝食を食べることが、少しうれしかった。食卓には温かい粥、窓の外には森があった。

ムジンは向かいに座らなかった。

顔を上げるたび、別の仕事をしているふりをした。

「怖いですか」

「いや」

「じゃあ、どうして避けるんですか」

ムジンは持っていた器を置いた。

「避けてません」

また耳が赤くなった。

イヒョンはそれ以上聞かなかった。

濡れた服では不快だろうと、ムジンが体を洗う湯を用意した。

部屋の隅の木の浴槽を拭き、古い布を掛けて仕切りにした。水を混ぜ、肘を入れて温度を確かめた。

タオルを置き、移し、畳み直した。

「熱すぎたら、言ってください」

イヒョンが足を下ろした。痛みに息を吸うと、すぐムジンが近づいた。

「体重をかけないで」

腕をつかんで立った。

ムジンは、イヒョンの体勢が整うと下がったが、手はすぐには離さなかった。

イヒョンが顔を上げた。

目が合った。

先にそらしたのは、ムジンだった。

* * *

ムジンは木箱から、いちばん小さな服を選んだ。それでも袖が長く余りそうだった。

なぜそんなことまで気になるのか、考えないようにした。

ソリンが来るときは、こうではなかった。隣に座り、手の甲に触れて話しかけられても、帳簿の数字は読めた。

今は部屋の向こうで服が擦れるだけで、顔が向いた。

「外にいるので、洗ってください。転びそうなら呼んで」

「一人で入れるか、どうか……」

イヒョンが浴槽の縁を見た。

答えかけたムジンの視線が下がった。指先が襟元をほどいていた。濡れた布が首から離れた。

喉が渇いた。

慌てて背を向けた。

「俺が出てから、脱いでください」

背後の動きが止まった。

服を、もう少し近くへ寄せた。

「女性用の服は、ありません」

「どうして、女性用が要るんですか」

「……不便かと思って」

「ムジンさん」

呼ばれて振り返った。

イヒョンは、ほどきかけのボタンを持ったまま見ていた。かすかに笑った。

「僕、男ですよ」

ムジンは何も言わなかった。

ストーブで薪が崩れた。

持っていたタオルの端が床についた。気づかなかった。

男。

意味を理解する前に、その言葉は昔の声を連れてきた。

おまえみたいな――

ムジンは歯を食いしばった。

イヒョンの笑みが消えた。

「……ムジンさん?」

タオルを置き、扉へ向かった。

「洗ってください」

声が、よそよそしく硬くなった。

扉を閉めると、冷たい風が顔に触れた。軒の下で立ち止まった。

目を閉じた。

それでも、今見た顔が消えなかった。

そのことが、何より怖かった。

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